『ニッケルオデオン 赤』読んだ

読みました。
 最近いろいろ漫画を買って、どれもうーんという感じのものばかりだったのですが、その中でこれは良かったので。ただ、感想とか書くのは難しい感じだったので適当な事しか書けませんが。
 友達の持ってた同人誌で萌え4コマの特集が組まれてて、前に冒頭だけチラッと見たことがあるんですが、あずまん的な文脈から、たった4コマで成立する(時にしてすらいない)非物語的な何かがフラットにバーっと並んでいる、そんな環境に生きるキャラクターはどうなったかみたいな事がたしか書いてあったと思います。結局どうなったと書かれていたのかは知らないんですが、なんとなく、萌え属性のデータベース的消費の最も先鋭的な形として、まあ軽くフラットで極端な感じになったのでしょう(すいません読みます)。この作品はそういう文脈で言われているような、キャラクターのある種の軽さ(?)みたいな物自体を、いびつさや儚さとして上手く美しく物語や形式に内在化させられているのではないかと感じました。
 本作は、全て8ページで完結するショートショートな短篇集のようになっています。萌え4コマの多くが基本的に物語の無い冗長性の塊のような物であるのに対して、この作品での8ページという制約からは、キャラクターの寿命というか儚さというか、ウルトラオレンジ的な何かを強く感じさせられます。あとこれも少ないページ数だからこそ出来るのだと思うんですが、とても物語の組み立てが上手いと思いました。
 キャラクターの造形についても、初音ミクのパクリだとか露骨に空虚な感じのキャラクターが出てきたり、皆大きい割にはうつろな目をしていたり、『バイオメガ』の復物主の世界に出てくる人間のような感じがあり、常にどこか欠けているような、いびつな印象を受けました(Wiki見たら作者の道満晴明は『シドニアの騎士』の同人誌を出した事があるようです)。
 そんなややいびつなキャラクター達がちょっとした、やや寂寥感のある変わった物語を展開する訳ですが、しかし、それらの要素はとても良く馴染んでいてかつ高水準で、こういう造形、内実のキャラクターが8ページ程度の長さで、こういう話として描かれているという事はとても自然に思えました。
 道満晴明の漫画は他に『ぱら☆いぞ』と『ヴォイニッチホテル』しか読んだ事が無いんですが、前者は萌え(?)4コマで、後者は一応ストーリー漫画となっていて、ちょうどこの中間に位置付けられるのが本作なのだと思うのですが、この3つの中では本作に、方法的にも内容的にも最も魅力を感じました。
 今思ったんですが、『バイオメガ』のヒグイデとイルンゴルヌルカの話はそのままこの本に入れても良いような気がします。まあ良かったです。