この前言ったマスダールシティについて

 限界点とかいった割にそれが具体的にどんな規模、レベルなのかは言ってなかったので、マスダールシティについて調べた事をまとめようと思います。

これはマスダールシティのプロモーションビデオ。

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 なんというかスターウォーズに出てきそうな感じです。このマスダールシティはUAE首長国であるアブダビで進行中のプロジェクトで、アブダビでの不動産開発を一手に請け負うディベロッパー、アルダール社が開発を行っています。中東については全く詳しくありませんが、石油が枯渇しかけているといわれるドバイと違い、アブダビにはまだ資源に猶予があるそうで、また先の金融危機の打撃もドバイ程では無かったみたいです。ドバイアブダビ首長国連邦の要として何かと競いあっているようで、その都市開発に関しても、ドバイを資本主義的な物量作戦とすると、アブダビは計画性を持ったお上品?な感じになっており対照的です。
 そこでマスダールシティですが、これはポスト化石燃料時代へ向けていち早く主導権を握るべく、アブダビの国営ファンドであるムバダラ開発から100%の出資を受けて現在開発中の代替エネルギー研究を中心とする都市でMITなんかも参加することになっているようです(ムバダラ開発のCEOはなんとまだ30代半ばだそうで、このような長期的目標を持つ大規模な投資を行うことにも非常に積極的です)、第一期が2013年に、最終的な完成は2024年頃になる予定で、最終的には90,000人がそこで生活することが出来る規模となる予定だそうです。
 ではマスダールのハイテク未来都市ぶりを調べた限りで説明したいと思います。まずこの都市内に自動車は出入できず、車でアクセスする際には街の外の立体駐車場に収容されます。ビデオでも街の外にいくつか映ってた円筒形のやつが多分駐車場です。ここで車を降りたらどうするのかというと、PRTと呼ばれるトランジットシステムに乗り換えます。これは無人の小型電気トラムみたいなもので、イギリスのヒースロー空港ではもう既に導入が決まっている現実の技術です。詳しくは分かりませんがマスダールでは、行き先を入力すれば自動でそこまで運んでくれるようなシステムになるようです。
 また、都市内では歩車分離がなされ、URTの路線や駅は基本的に地下に配置されます。そして都市内のどのエリアからも、200メートル以内で主要な施設に辿りつけるようになってるそうです。このように都市内での基本的な移動手段は徒歩とURTになる訳です。既存のライフスタイルとは大きく異なる生活をこのように大胆に提案できるような建築プロジェクトは他にあまり聞いたことがありません。ここでは生活そのものが詳細にデータ化され実験の一部として検証、改良されてゆくのでしょう。
 次にエネルギーに関して、マスダールシティはカーボンフリー、廃棄物ゼロ、水の80%再利用を目標に掲げています。利用されるエネルギーの100%を太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーでまかない(太陽光発電に関しては、東工大がビームダウン方式のプラントをマスダールでトライアル中だったりもします)、廃棄物や水は再利用するという感じですね。他にも面白そうなことがいろいろあるんですがまあこのへんでいいか。

 こんなことが技術的にできるのかは分かりませんが、そのチャレンジ精神は買いたいです。こういう計画というのは基本的に静的にその場で効果を出すというよりは、動的に技術発展を促すための礎とするといった意味のほうが大きいんでしょう。そして失敗は失敗でそれが詳細に検証されるのであれば、まあ前進には違いないという訳です。LEEDなんかもそういった意味合いが強いものなのではないかと思っています。
 限界とか言ったが・・・こんだけできりゃ十分じゃね?